定番のダイヤモンド以外の宝石を選んだ婚約指輪

結婚を決めたのは20代始めのこと。就職3年目の彼と、当時まだ学生だった私には十分な資金がありませんでした。
当時流行り始めたレストランウェディングで、結婚費用は安く収めました。
お給料はあるだけ使ってしまう彼に、婚約指輪に十分なお金をあてる余裕はありません。
予算は15万円ほど。それで買えるダイヤモンドの婚約指輪は、本当に小さなちいさな石のものでした。
そこで思いついたのが、ダイヤモンド以外の宝石を用いた指輪です。少し天邪鬼なところもあり、人と同じような婚約指輪は嫌だと思っていた私。
大好きな緑色の宝石が良いと思いましたが、緑の宝石の代名詞ともいえるエメラルドは、やはりとても高額な宝石です。
そこで、深い色合いが美しいと思っていたグルーントルマリンに狙いを定めました。

結婚式の3か月前。2人で老舗のデパートを訪れました。
一生懸命探して、私が選んだのは2カラットのグリーントルマリンの指輪です。
中央の石の周囲を、小さなメレダイヤが6つ囲んでいます。20歳そこそこの小娘には少し背伸びしたデザインでした。
どうせ、若いうちはこんな指輪をつける機会なんてめったにない、それならおばさんになっても使える指輪にしよう。
そう考えてのことでした。
予算に収まる指輪は、紅白の『寿』のケースに入れて頂きました。店員さんは少しいぶかしがりながら、リクエストに応えてくださいました。

あれから、もう20年以上になります。
結婚した私たちはたくさんの子どもたちに恵まれ、予想通り忙しい子育てのさなかに指輪をつける機会はありませんでした。
ようやく子育てがひと段落したつい最近。懐かしい思いで、指輪を引っ張り出してきました。
お互い中年になって、私も結婚したときよりずいぶん体格が良くなってしまいましたが、幸いにも指輪は左手の薬指にすんなり嵌まってくれました。
今も、傷ひとつないピカピカのままの婚約指輪です。
パーティーでもない限り、今の私には身に着ける機会のないものですが、結婚のすばらしい思い出の品としてときどき取り出して眺めています。
そのたびに、幸せだった結婚式とそのあとの結婚生活のことを思い、心が温かくなります。

たとえ使う機会がなくとも、私にとっては心のよりどころともいえる、とても大切な指輪です。